“The Creation and Destruction of Value” 価値の創造と破壊 Vol.8

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Vol.8 金融革命の度合と限界(第4章-1)

 証券化に係る最も最近の根本的な技術革新は、1990年代半ばに始まり、J.P.モルガンが関係している。決定的だったのは、1997年に着手された Broad Index Securitized Trust Offering (BISTRO) であった。この制度では、元々の債権関係が細分化され、簿外単位で証券化され、Structured Investment Vehicle (SIV) として取引された。21世紀に入ると、証券化は不動産ビジネスの形を変え始めた。サブプライム・モーゲージは、認証後に債権に何が起こっても認証者が責任を負わないものであった。
 2005-07年には、5400億ドルの抵当化債務及び不動産証券が創り出された。2009年初期までにはこれらの内1020億ドルが整理され、優先債の32%、メザニン債の5%しか回収されなかったことになる。ジョージ・ソロス曰く、合理的期待形成モデルへの過度な思い入れについては、経済学者は投資銀行員と同様に責任があり、その間違いの代償を払うべきである。

参考
Robert Lucas, rational expectations, and the understanding of business cycles | @LarsPSyll
LIFE AFTER “RATIONAL EXPECTATIONS”?: Imperfect Knowledge, Behavioral Insights and the Social Context [PDF] | Roman Frydman and Michael D. Goldberg
The New Paradigm for Financial Markets: The Credit Crisis of 2008 and What It Means [PDF] | George Soros

“The Creation and Destruction of Value” 価値の創造と破壊 Vol.7

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Vol.7 2008年世界金融危機(第3章-3)

 第三に人の流れの減少の面である。
 2008-09年の急速な貿易の収縮においては、グローバルな相互の繋がりを縮小させることが政策として選択されたのでは決してなかったが、外国人の求職に反対する国民が英独では過半数を超えるなど国民感情の転換はあった。
 また、2008年には自国に移民が押し寄せ労働市場が崩壊し得るグローバリゼーションの時代になっており、新興国が自国のみで破綻していた1990年代よりも先進国の不安は遥かに大きく、先進国は新興国にカネ・モノ・労働力の市場において徹底した対策を要求していたが本来効果のある対策も徐々に効果的でなくなった。

(あくまで参考:The Rise and Fall of Pyramid Schemes in Albania | Christopher JervisThe Free Movement of Workers in an Enlarged European Union: Institutional Underpinnings of Economic Adjustment | IZAFact Sheets on the European Union | European Parliament

“The Creation and Destruction of Value” 価値の創造と破壊 Vol.6

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Vol.6 2008年世界金融危機(第3章―2)

 第二に、モノの流れの減少の面である。
 特に、リーマン崩壊の端緒において銀行信用が収縮し貿易金融が儘ならなくなったところ、多くの先進国では半官の金融機関が貿易保証を出せたが、同様のことをできた新興国は殆ど無かった。そのため、アジア・ラテンアメリカ諸国は、買い手が居ても先進国に輸出できなくなってしまった。そして、生産拡大のための精密機械などの輸入もできなくなり、それらを輸出していた日独の輸出は2008年第4四半期には激減した。
 そして、貿易が減ると人は貿易依存を減らそうとするという脱グローバリゼーションの悪循環に陥った。これは、理想的な防衛手法ではないにせよ、デフレーションの増殖を国境で食い止める非常に満足の行く次善の策であった。開放経済では、需要が自国の枠から漏れ外国に職を創出し税も外国政府に行ってしまう “leaky Keynesianism”(漏れるケインズ主義。あくまで参考:Fixing the Economy? Like Filling a Leaky Bucket | @TheRagBlog。)になることがあるためである。
 加えて、欧州では、通貨統合のためのマーストリヒト条約の中核である、公債発行額をGDPの3%以内、公債発行残高を60%以内とする財政ルールは、ケインズ的反循環政策(景気刺激策)を採らねばならない危機においては、放棄されねばならなかったが、それが可能な仏独と不可能な希伊葡に分かれるなど、意思決定力が麻痺してしまった(あくまで参考:Guest Post by Timothy King: Keynesian Policies Under the Fiscal Treaty | Phillip Lane @irisheconomyieGoverning hand: Philip Lane takes charge of Central Bank in recovering economy | @BeesleyIT)。

イギリス Vol.7(”Brexit”? – UK’s Referendum on EU Membership イギリスEU残留国民投票 Vol.6)

Here is just a part of universities’/scholars’ (academic) articles/papers/videos/podcasts concerning the Brexit on Twitter through early morning, 22 June (BST).

[United Kingdom]

@Cambridge_Uni

@CambridgeNewsUK

@Politics_Oxford

@UniofOxford

@LSEEcon

@ConUnit_UCL

@KingsCollegeLon

@WarwickBSchool

@DurhamLawSchool

@cranfieldmngmt

@UniOfSurrey

@UniofBathIPR

@BristolUni

Manchester @MBSnews

@unibirmingham

@UniofExeter

(@UniofNottingham)

@unisouthampton

@sheffielduni

(@UniofReading)

Leicester @UoLNewsCentre

@lancasterarts

@UniWestminster

(@Uni_of_Essex)

@SussexUni

@imperialcollege

@QMUL

(@RoyalHolloway)

(@GoldsmithsUoL)

London Business School @LBS

@UoLondon

@CityUniLondon

(@StirManSchool)

@lborouniversity

@UniKent

@BradfordUniSIS

@YorkAlumni

@uniofeastanglia

@UniofNewcastle

@UniversityLeeds

@livuninews

(@univofstandrews)

(@UofGlasgow)

@EdinburghUni

@aberdeenuni

(@dundeeuni)

@cardiffuni

(Aberystwyth @AberUni)

@QueensUBelfast

[Overseas]

@tcddublin

UCDDublin @UCDLawSchool

@AucklandUni

(@unimelb)

Melbourne @Government_UoM

(@ANU_Law)

@ArtSS_Sydney

Toronto @UofT_PolSci

(Toronto @munkschool)

@UBCSauderSchool

@UBC

Harvard @Kennedy_School

@Harvard_Law

@YaleSOM

@YaleGlobal

@PrincetonBCF

(Princeton @WilsonSchool)

@StanfordCISAC

Stanford @SIEPR

(@MIT)

@UChicago

@UCBerkeley

イギリス Vol.5(”Brexit”? – UK’s Referendum on EU Membership イギリスEU残留国民投票 Vol.4)

Here is just a part of (academic/analytical) articles concerning the Brexit.

This is how Brexit would affect British trade | Roderick Abbott @wefThey need each otherFree Trade WorldEEA two-pillar structureEEA & EFTA bodies

Will Brexit Destroy Britain and Europe?: @plegrain weighs the views of Joschka Fischer, Richard Haass, Joseph Nye, and others on what Britain’s withdrawal from the EU would mean for both sides. @ProSyn
– On June 23, British voters will decide in a referendum whether to remain in the EU or go it alone. Advocates of remaining, including Prime Minister David Cameron, may have the better arguments, but the future of the UK – and of Europe – is unlikely to be determined by reason alone. –

Britain’s Enemy Within | Harold James @ProSyn

Why Britain Should Remain European | Simon Johnson @ProSynCER-1CER-2

Europe’s Generational War | Harold James @ProSyn

Can the UK Survive Brexit? | Harold James @ProSyn

The Economic Consequences of Brexit | @plegrain @ProSyn @CEP_LSEPriceIncome

The UK Referendum – and the Future of the European Project [with PDF] | @guydej1 @ECIPE

The Brexit briefs June 2016: Our guide to Britain’s EU referendum [PDF] | @TheEconomistBrainsBetterLeverageShare

A background guide to “Brexit” from the European Union | @TheEconomistDebateTimesRegulation

EU referendum special [Podcast]
– @annemcelvoy hosts a special version of The Economist asks. @ZannyMB, editor of The Economist, reveals why the magazine has taken a strong line on Brexit, while Italian ex-Prime Minister and EU Commissioner Mario Monti criticises David Cameron’s handling of the issue. Plus, MPs from Leave and Remain go toe to toe, and Lane Greene gives his take on the language that has defined the campaigns. –

Brexit: the potential of a financial catastrophe and long-term consequences for the UK financial sector | ‏@CFMUK @voxeu @cepr_org

A British Exit from the EU Leaves the Financial Sector Vulnerable | @FTI_SC

日本のガラパゴス症候群 Vol.5(各種Indexランキング: Global Competitiveness, Good Country, Best Countries for Business, Homeownership Linked to Happiness, Global Innovation …)

ガラパゴス化とは直接は関係ありませんが、下記URLウェブサイト(English)は各種ランキングの国別の例です。

Best Countries for Business

Good Country

Global Competitiveness

Homeownership Linked to Happiness

Global Innovation

World’s Smartest Cities

Cost of Living

定量的分析は一般に説得力があり証明力が強いと考えられます。他方、数字は時々刻々動くものである上に、数字の取り方や解釈の仕方などにより結論は変わり得るので、定量的分析が完全に客観的・固定的であるとももちろん言えません。そもそも、国別ランキングは、分析者などの言語や思考の壁によるのか、あくまで個人的な感覚では「本当にそうか?」と思わせるものが少なくありません。。。などなど。

概括的に傾向は掴みつつも、数字やランキングに一喜一憂せず、改革・改善のために地道に研鑽を重ねていくしかないのでしょう。

姉妹都市 Vol.3(Tripartite Economic Alliance ロサンゼルスLA=オークランドAK=広州GZ 三市経済連携)

今日は”サミット”の話、と言っても先月下旬の議長国日本・伊勢志摩G7の話ではありません。〔以下ツイッターリンクは中国の広州市Guangzhouも含めてEnglish、日本の各市町のホームページはそれぞれ。〕

ロサンゼルス市(LA、人口380万人、アメリカ。参考:@MayorOfLA 市長)・オークランド市(AK、市人口40万人強・都市圏人口150万人、ニュージーランド。参考:@Auckland_NZ 市役所)・広州市(GZ、人口1300万人、中国。参考:@Guangzhou_City 市役所)の相互に姉妹都市である三市による Tripartite Economic Summit 2016 三市経済サミット が先月中旬にオークランドで開催されました。21世紀の都市間交流のあり方を打ち立てるべく2014年11月に世界初の三市経済連携協定(Tripartite Economic Alliance agreement)が結ばれ、初回”サミット”が昨年6月にロサンゼルスで開催されたとのことです。

都市間交流・地域間交流は一対一・文化交流という形である印象がありますが、太平洋を跨いだ三大都市の継続的な経済連携枠組みで世界初というのは第一印象としてはインパクトがあります。もちろん細部を少しずつ継続的に理解して行く必要がありますが、民間企業が収益を上げるのに役に立つ経済連携の形を取れば地方公共団体にも(もちろん中央政府にも)予算的労働的に負担がかからないということは言えます。また、人間で言えば、二人の方が突っ込んだ内容を話せるけど三人以上の枠組みの方が派手だったり長持ちしたりもする(あくまで参考:下記※)、というような感じでしょうか。従来型交流と適宜並行して進むと良さそうです。
なお、上記三市の日本の姉妹都市は、ロサンゼルス市とは名古屋市(参考:名古屋市英語ホームページ)、オークランド市とは大阪市(参考:大阪市英語ホームページ)・福岡市(参考:福岡市英語ホームページ)・富岡町(友好都市。参考:福島県富岡町ホームページ。)・宇都宮市(参考:宇都宮市ホームページ)・品川区(参考:品川区英語ホームページ)、広州市とは福岡市、のようです。また、広州市の姉妹都市には、当都市経済連携には入っておらず、ニュージーランドとは隣国かつ同盟国であるオーストラリアのシドニー市(参考:@cityofsydney 市役所)もあり、先月で両市姉妹都市30年になり喜ばしいとの報道が何度か目に入ってきました。シドニー市の姉妹都市には日本の名古屋市もあります。

※ 各人が手抜き無しに努力を怠らないチームの人数は、例えばWhy Less Is More in Teams | Mark de Rond では、4人とされています。他方、適度な頑張りが必要となる姉妹都市経済連携のような組織間の持続的試みにおいては、検証等必要ですが、各者が一定程度以上望んでいれば3者というのが一番長持ちしそうだと第一感では思いました。

“The Creation and Destruction of Value” 価値の創造と破壊 Vol.4

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Vol.4 第2章-2  

 他方、1931年のdisasterでは、容易な解決策は無かったが、ハイパーインフレーション(参考:In today’s debt crisis, Germany is the US of 1931 | @flindner23)などを引き起こした愚策の後の銀行のバランスシートの悪化が原因であると明白であった。メガバンクが崩壊した欧州が、小規模地域銀行が主体の米国での不安を煽って、崩壊に導いたと言える。
 一つの解決策としては、1944年のブレトンウッズ会議(参考:Establishment of the Bretton Woods System | @AtlantaFed)での中心的議題であった、逆行しているカネの流れの封じ込めがあったが、民主主義の時代には難しかった。
 もう一つは、1930年代にゴットフリート・ハバーラー(Gottfried Haberler (by @mises))など何人かから指摘された、固定為替制は通貨危機に対して脆弱であるので、為替変動制に移行することであったが、金融制度の未発展国の国民は自国では自国通貨を長期的に調達することができず、常に為替変動リスクに晒されるというものである。尤も、21世紀初頭には、1929回避のための通貨政策と共に、1931回避のための金融機関なども整備されてきた。

“The Creation and Destruction of Value” 価値の創造と破壊 Vol.3

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Vol.3 1929年と1931年(第2章ー1)

 1929年と1931年は対照的であった。
 1929年の崩壊は、公開市場操作(参考:Open Market Operations (OMOs))による流動性の増加(参考:Market Liquidity)と伝統的な通貨政策(参考:The Federal Reserve’s Unconventional Policies)という二つの非常にもっともな解決策があったが、原因は未だ解明されていない。正確には、原因の合理的な説明として二つ可能性のあるものがあるが、必ずしも満足なものではない。

 その一つは、投資家が米国経済停滞の予兆を見て、1907年10月の崩壊などを想起し、それに対応して投資を控え、世界大恐慌に陥ることとなったというもの。しかし、例えば、崩壊初期の1930年における消費の落ち込み30億ドルのうち13億ドルしか崩壊パニックによっては説明が付かない。
 もう一つは、個人や会社がカネを借りる際の担保がパニックにより減り、世界大恐慌の特徴とされる(証券投資などに回すために銀行から預金が大量に引き出される)金融仲介機能の崩壊(参考:Credit Availability and the Collapse of the Banking Sector in the 1930s)を引き起こしたというもの。しかし、ロバート・シラー教授(参考:Yale@RobertJShillerProjectSyndicate)も言うように、歴史的比較からの崩壊の想起無くしては語れない。欧州やアジアにパニックが広がらなかったのが驚きではあるにしても。

“The Creation and Destruction of Value” 価値の創造と破壊 Vol.2

Vol.2
 globalization グローバリゼーションとそれによる反動・崩壊の傾向は、以下のとおりです。
 1.世界についてのユビキタスな理解の仕方であるグローバリゼーションを分析手法として固定的に捉えていた人達は、そのvolatilityとinstabilityを理解するのに失敗した。
 2.グローバリゼーションは、モノ・人・資本の国際的移動のみならずideasの転移やテクノロジーの転回にも関連するので、人々の嗜好にまで影響しそれを再構築する。
 3.結果、value(価値、価値観)に係る継続的な確信の無さを、一時的にも長期的にも齎す。経済的現象を遥かに超えるものである。
 4.グローバリゼーションは非常に突然に価値の変更を伴う周期的な金融大惨事に対して脆弱であるため、大惨事の間に人々の価値の再評価が起きてしまう。
 5.そこで、人々は、世界が複雑に相互に関連している模様を見始める。
 6.価値の再評価には、deflation デフレーションinflation インフレーション、そしてその両者が同時に起きる統合失調的状態のような通貨の(monetary)根本的な不安定さも含まれる。
 7.この不安定さは、gold standard 金本位制であれ管理通貨制であれ、通貨の管理のための専門的力量につき疑問を想起させる。
 8.そこで、今日、人々は、1920年代30年代のGreat Depression 世界大恐慌を回想することとなる。
 9.政治と経済はほどけない形で本来的に繋がっており、政治がグローバリゼーションの危機への対処のための市場メカニズムへの代案を提供する。
 10.崩壊が起きると、再構築は極めて難しい。価値の再生には時間がかかる。
 これらの指摘の上で、当世のグローバリゼーション(第1章)、戦間期(1919-1939年)の崩壊(第2章)、から第6章まで、著者の洞察などが書かれています。次回以降、代表的な部分を挙げます。