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Vol.5 2008年世界金融危機(第3章―1)
2008年金融危機が先鋭化するにつれ、20世紀のGreat Depression(世界大恐慌)時の下降局面を想起させる脱グローバリゼーション現象が出てきた。カネ、モノ、人、の流れの減少である。
第一に、カネの流れの減少である。
米国の金融機関は、“lender of last resort”(最後の貸し手。参考:Central banks as lender of last resort: experiences during the 2007-2010 crisis and lessons for the future | Dietrich Domanski, Richhild Moessner, and William Nelson。)として金融当局や中央銀行を当てにしているにもかかわらず、国内向けには必ずしも貸し出しに積極的にならなかった。このため、例えば、米国政府によるAIGの救済で恩恵を受けたのは、大口の取引を有していたドイツ銀行、クレディ・リヨネ、UBSと外国金融機関であった。金融危機は、米国において、国際金融の繋がりへの根本的な疑問を呼び起こした。
また、米国外からも、RBSのような損失が出た金融機関について「RBSの損失の殆ど全ては、米国内での営業上の住宅ローン担保証券商品などのサブプライム・モーゲージにおけるものであり、蘭ABN Amroを吸収したことによる(参考:Banking bailout: The rise and fall of RBS | Gordon Rayner)。英国国民のカネで銀行がこのような無責任な経営をしたことは、間違いだ。」とのブラウン英首相(当時)による批判があった。このとおり、英国政府による救済の重要部分は、RBSの外国支店や外国での事業を売却することであった。