“The Creation and Destruction of Value” 価値の創造と破壊 Vol.10

(All the below links are in English.)

Vol.10 金融革命の度合と限界(第4章-3)

 2005年の破産法改正によりCDSやモーゲージレポなどの証券は通常の破産手続無しに畳めるようになったことも、劇的な借り入れブームを誘発した。また、銀行に支配される簿外取引の増加、及び、債務弁済義務が無いかのような曖昧な形の親銀行の借り入れ慣行も、借り入れ増加を助長した。しかし、最も明白な元凶は、2001年の景気停滞に対処するための連銀の急激な利下げと、金融引き締め開始への乗り気薄であったことであった。
 銀行規制は国内市場では比較的機能するが、国境を跨ぐ複雑な取引に対しては相当難しくなる。“too big to fail”となる大規模かつ複雑な構造の銀行が誕生しないように規制をかける必要があった。また、過度の成長と技術革新から生じた危機への対処法は逆説的に更なる技術の発展にある、と銀行の問題についても言える。技術革新により少ない雇用で多くの市場参加者が生じ、生産性が上がりマクロ経済の脆弱性は下がる。
 ただ、金融戦略については技術革新が頼りになるとも言い切れない。例えば、投資銀行は最先端も含めて金融に詳しいので、M&Aのアドバイスをしつつ、証券を発行したり自分にとって良い取引をしていたりもし、これらは債権者などの利益に繋がるとは限らない。最近の心理学の経済学への応用に見られるように、多くの人間の決定は非合理的である。例えば、英国では長く電車の運転には乗員が二人必要だとされていたのでワンマン電車が安全であると公衆を説得するのに時間がかかったが、今は無人運転の電車すらあるくらいである。多分、技術革新は、人間の間違いによる大混乱を回避する上では良いのだろうが。

参考
2005 Bankruptcy Act impacted repos and housing bubble | Mary Fricker, RepoWatch
Banks’ Off-Balance-Sheet Risks Come Under Basel Scrutiny | Jim Brunsden @business
Bank Size and Systemic Risk (PDF) | Luc Laeven, Lev Ratnovski, and Hui Tong @IMFNews
We will put people first, not bankers | Gordon Brown @guardian
Why the French said “non”: Creditor-debtor politics and the German financial crises of 1930 and 1931 (PDF) | Simon Banholzer & Tobias Straumann
Preventing Transboundary Crises: The Management and Regulation of Setbacks (PDF) | Emery Roe @CalStateEastBay
Changes may hurt as much as crisis | Harold James @FinancialNews


投稿者: ワールド ソルーションズ

国際的な諸問題の解決に結び付き得るよう、国際事情を少しずつ読み解きます。