日本のガラパゴス症候群 Vol.1(Shinkansen | Wharton)

Finding the Silver Bullet for Japan’s Train Dilemma | Knowledge@Wharton (English) では、”Japan has the safest rail system in the world — so why is it struggling to convince others to buy its technology?” (日本は世界一安全な鉄道システムを持っているのに、何故そのテクノロジーを買うよう外国を説得するのに四苦八苦しているのか?)という問い掛けをツイッターで掲げられ(本文第1段落で同質問がより詳細に書かれている)、本文第3段落で”…only if it can overcome some major disadvantages such as its high cost and the closed-system nature of the product.”(高いコストと他の鉄道システムへの接続不可能という閉じた性質のような短所が克服された場合にのみ…何とか輸出できるかもしれない)とされている。

第4~8段落では、外国では受け容れられない閉じた独自性たる‘Galápagos Syndrome’(ガラパゴス『症候群』)につき述べられている。
・ 左側しか走行できない日本の新幹線は左右いずれでも走行し得る外国には売れ得ない(工学院大学 曽根悟 特任教授(日本語))
・ 欧中の高速鉄道と異なり日本の新幹線が(システム全体を一括でしか売らないため)輸入国の既存鉄道システムに接続できないのは間違いなく現実の限界(a real, practical limitation)である(イリノイ大学アーバナシャンペーン校 Rapik Saat 研究助教(English))
・ とりわけアメリカでは一括システムを導入する予定の地域は殆ど無い(アメリカ中西部高速鉄道協会 Rick Harnish 上級部長(English))
・ オバマ大統領提唱のような(既存鉄道と接続する)全国高速鉄道網ではなく(新たに結ぶ)都市間鉄道(台北~高雄、メルボルン~シドニー、クアラルンプール~シンガポール、ワシントンDC~ニューヨークなど)に新幹線システムは向いている(国際高速鉄道協会 Torkel L. Patterson 理事長代理(日本語))
などが紹介されている。

反面、第9~13段落では、
・ 安全性・時刻正確性・本数、初期コストの高さを帳消しにする運用・維持コストの低さという新幹線の強み(Patterson氏)
・ 高速鉄道導入国は長期間の安全性を重視するようになる(愛知大学 土橋喜 教授(日本語))
・ 中国がアメリカ・南米・アジア向けに日欧のシステムの特徴を取り入れた低コスト高速鉄道の売り込みに盛んであり、中国政府首脳が事務方以上にテコ入れしている(交通専門家 Richard Di Bona 氏(English))
などが紹介されている。

第14~19段落では、安倍首相によるインド・東南アジアでの売り込み努力に係る説明と共に、
・ 日本から台湾への輸出は欧州基準とのハイブリッドだが大半は日本型である(ムーディーズ・ジャパン Kailash Chhaya VP・シニアアナリスト(English))
・ 高速鉄道テクノロジーを自前では持っていないアメリカが輸出先としてベストだが、果たして中国の倍の価格の日本の安全な高速鉄道を買うだろうか(曽根氏)
・ 既存の貨物や乗客用の鉄道と混合・接続するために仕様をカスタマイズする必要があるアメリカでは走行速度は下がる(Chhaya氏)
・ ダラス・ヒューストン間のように一括システムを使う地域はアメリカでもわずかである(Harnish氏)
・ カリフォルニアも混合型にする(Patterson氏)
・ ワシントンDC・ニューヨーク間を1時間で結ぶため、まず人口集積地ではないボルチモアとワシントンDCを結んでみるのをサポートする旨、日本政府は言っている((U.S.-Japan Maglev LLC 代表でもある)Patterson氏)
などが紹介されている。

第20~22段落では、
・ 有権者が国家予算の費用に相当する効用を信じていないところ、政治家は国家予算による大規模投資に係るビジョンや意欲を優先しては再選が難しく、テキサス・フロリダ・中西部・・・ペンシルバニアと多くの地域について話し合いはあったが、カリフォルニア以外は何の進展も無い(W. BRUCE ALLEN Wharton校 名誉教授(English))
・ 市場も地理も人口密度も問題では無く政治が唯一の問題であって政治が政策を敏捷に変えるのは難しい、ただテキサスでの主要プロジェクトが1930年代の高速道路の実現のように高速鉄道構築へと政策を『軽く押す』(nudge、参考:Nudging the world toward smarter public policy: An interview with Richard Thaler(English))転換点(tipping point)となり得る(Harnish氏)
などが紹介されている。


投稿者: ワールド ソルーションズ

国際的な諸問題の解決に結び付き得るよう、国際事情を少しずつ読み解きます。